マウスピースで出っ歯を矯正できるか不安な方は多いです。
結論から言うと、出っ歯矯正も例外なくマウスピース矯正(インビザライン)で治療できます。
私は千葉県と埼玉県でインビザライン専門で歯科矯正治療を行う歯科医院を運営しています。
様々な症例を治療してきた経験をもとに出っ歯矯正を行った症例を紹介しながら、治療後にどう変化するのかを解説していきたいと思います。
ちゃんと治療できるかを治療例(症例)をもとに検討していきたいです!
Contents
出っ歯になる原因
そもそも出っ歯には3つの種類があり、それぞれに原因があります。
- 骨格性の上顎前突
⇨顎骨の位置がずれていることが原因 - 歯槽性の上顎前突
⇨歯が内側や外側に傾斜していることが原因 - 2つが混合した上顎前突
⇨骨の位置がずれていることに加えて歯が傾斜していることが原因
『出っ歯』と言っても様々な種類や原因があることをご理解いただくことが、良い矯正治療への第一歩になります。
まずはこの章を読んで、自分がどのタイプに近いのかを考えてみてくださいね。
①顎骨の位置がずれていることが原因
骨格性の上顎前突は、顎骨の位置がずれていることが原因です。
骨格性の上顎前突とは、以下のように上顎骨と下顎骨の角度に大きく差がある状態です。
- 上顎全体が前に出ている
- 下顎全体が後ろに下がっている
②歯が内側や外側に傾斜していることが原因
歯槽性の上顎前突は、歯が内側や外側に傾斜していることが原因です。
歯槽性の上顎前突とは、上顎と下顎の角度の差がほとんどない状態で、歯が以下のように傾斜している状態です。
- 上顎前歯が外側に傾斜している(唇側傾斜)
- 下顎の前歯が内側に傾斜している(舌側傾斜)
- 上顎前歯は唇側傾斜、かつ下顎前歯は舌側傾斜
- 顎が小さく歯が歯が重なる
- 舌で歯を前に押してしまう癖
- 前歯で爪をかむ癖
- 幼少時の指しゃぶり
③骨の位置がずれていることに加えて歯が傾斜していることが原因
出っ歯の中で最も多くみられるのが、①骨格性の上顎前突と②歯槽性の上顎前突が混合しているタイプです。
これは顎骨の位置がずれている上に、前歯も傾斜してしまっている状態を指します。
原因は先天的な顎骨の問題に加えて、幼少時のころからの癖など後天的なものを併発してしまったと考えられます。
実際に歯科矯正医院でレントゲンを撮影してみないと正確な診断を下すことができませんが、出っ歯の種類や原因が一つではないことをご理解いただけましたか?
出っ歯の原因や種類を把握したら、一体どんな出っ歯ならインビザライン矯正治療ができるのかどうか気になってくるのではないかと思います。
そこで、次は実際にインビザラインで出っ歯治療をした症例をご紹介いたします!
インビザラインで出っ歯を治療した3つの症例
前の章では出っ歯の原因や種類をご覧いただいたので、ここでは実際にインビザラインで出っ歯治療をした症例をご紹介いたします!
紹介する症例は以下の3つです。
- 13歳・女性
- 18歳・男性
- 31歳・女性
では、見ていきましょう!
13歳・女性のインビザライン治療例
【Before】
【After】
年齢・性別 | 13歳・女性 |
治療動機 |
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診断内容 |
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治療期間 | 1年9ヶ月 |
来院回数 | 12回 |
治療計画 |
|
治療費 | 90万円(税抜) |
※施術の副作用(リスク):疼痛、咬合時痛、知覚過敏、歯根吸収、歯肉退縮が生じる可能性があります。
歯の隙間と口を閉じている時に前歯が出ているのが気になるとのことでしたが、検査の結果『中等度の上顎前突』『軽度の空隙歯列』と診断させていただきました。
骨格的な問題で歯が出ているのではなく上顎の前歯が唇側に傾斜している状態で、その原因は舌で歯を押してしまう癖にあると疑いました。
インビザラインで歯列を整えながら前歯を下げるような矯正治療を行うと共に、治療完了後も保定装置をしっかり装着してもらい舌癖改善に努めていただきました。
患者さんに1日22時間以上装着していただいた結果、1年9ヶ月で歯列・噛み合わせ治療を完了することができました。
もともと歯に隙間があったので抜歯は必要なく、歯列全体を後ろに下げながら歯の隙間を埋めるように歯列を整えることで出っ歯とすきっ歯を同時に治療することができました。
こちらの患者さんのように歯にスペースがある場合は、抜歯でスペースづくりをする必要がないので抜歯は必要ない場合が多いです。
当院ではインビザラインを用いて出っ歯とすきっ歯を同時に治療することができますので、ぜひご相談ください。
18歳・男性のインビザライン治療例
【Before】
【After】
年齢・性別 | 18歳・男性 |
治療動機 |
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診断内容 |
|
治療期間 | 1年6ヶ月 |
来院回数 | 9回 |
治療計画 |
|
治療費 | 90万円(税抜) |
※施術の副作用(リスク):疼痛、咬合時痛、知覚過敏、歯根吸収、歯肉退縮が生じる可能性があります。
前歯のガタつきと上の前歯が前に出ているとのお悩み相談にいらしていただいたので、精密検査をすると『上下顎軽度の叢生』『中等度の上顎前突』という結果でした。
前歯の出っ張りは骨格ではなく歯の生える角度の問題だったので、インビザラインで対応できると判断し治療を開始することにしました。
叢生が軽度だったので抜歯はせずにIPRと側方拡大で歯列にスペースを作り、歯並びを整える計画にしました。
成人式までに治療を完了させたいとのことでしたので、加速矯正装置を並行して使用してもらうことにしました。
加速矯正装置を使用するとマウスピースの交換速度が早まることが多いので、矯正期間を縮められる可能性が高くなります。
治療は無事に1年6ヶ月で完了し、成人式には綺麗な歯並びで参列されたとのことでした。
歯科矯正医として患者さんのご要望にしっかり結果でお応えできたことが非常に嬉しかった一件です。
色々な相談をお待ちしておりますので、お気軽にご連絡くださいね。
31歳・女性のインビザライン治療例
【Before】
【After】
年齢・性別 | 31歳・女性 |
治療動機 |
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診断内容 |
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治療期間 | 1年9ヶ月 |
来院回数 | 11回 |
治療計画 |
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治療費 | 90万円(税抜) |
※施術の副作用(リスク):疼痛、咬合時痛、知覚過敏、歯根吸収、歯肉退縮が生じる可能性があります。
こちらの患者さんは上の八重歯と前歯が前に斜めっていることに長年お悩みで、相談にいらしてくださいました。
仕事の関係上ワイヤー矯正ができないため、マウスピース矯正ができる医院を探してご来院いただきました。
精密検査の結果、『中等度の叢生』『軽度の上顎前突』と診断させていただきました。
歯列にスペースがないから叢生が発生してしまい、その結果前歯が唇側に倒れて生えてしまっているという状態でした。
八重歯をスムーズに治療するために抜歯を提案しましたが患者さんのご意向で抜歯はしないこととし、奥歯の後方移動で対応することにしました。
奥歯を後方に動かしできたスペースを利用して八重歯を歯列に戻しながら、歯列全体を後ろに下げる治療をインビザラインで行う治療計画を立てました。
複雑な歯の動きが必要になるので、アンカースクリューを使用させていただきました。
アンカースクリューを顎の骨に埋め込むことで歯を動かすための固定源になるので、今までの治療方法では難しかったような症例でも歯を動かすことが可能になります。
八重歯が歯列に綺麗におさまり歯列を後ろに下げることができたので、気になっていた前歯の出っ張りも解消され綺麗な歯並びになりました。
アンカースクリューは骨に埋め込みますが治療が終わったら取り除き、穴もすぐに塞がるので治療完了後に大きな障害とならないのでご安心ください。
他院で抜歯が必要と診断された場合でも、当院であれば抜歯なしで治療できる可能性を一緒にお考えいたしますのでぜひご相談ください。
インビザラインで出っ歯を治すメリット
インビザラインで実際に治療した出っ歯の症例をご覧いただいたところで、ここではインビザラインで出っ歯を治すメリットを解説します。
まずインビザライン矯正自体の基本的なメリットをご覧いただき、それを踏まえた上で出っ歯治療におけるインビザラインのメリットを紹介します。
- 透明なマウスピースで目立ちにくい
- 食事や歯磨きの際に取り外せる
- 治療前に3Dシュミレーターで治療計画を確認できる
- 側方拡大や奥歯の後方移動が得意
- 加速矯正装置と併用すれば効率的な治療ができる
- 2〜3ヶ月に1度の通院で良い
インビザライン矯正自体のメリットはご理解いただけましたか?
では、次にインビザラインで出っ歯を矯正するメリットをご紹介します!
- 抜歯ありの治療計画と抜歯なしの治療計画を3Dで事前にシュミレーションできる
事前に様々な治療計画のシュミレーションを確認できるため、治療完了後のイメージが湧きやすい。 - 抜歯以外の治療選択肢がある
奥歯の後方移動・歯列の側方拡大・IPRなどで歯列にスペースを作れる。 - 抜歯ありでもインビザライン単独で治療ができる
仮に抜歯をした場合でも、マウスピースのみで精神的・身体的に負担の少ない治療ができる。 - 加速矯正装置を使用すればより効率的に治療ができる可能性がある
1日数分間加速矯正装置を使用すれば、マウスピースの交換頻度が早まり予定よりも治療期間を縮められる可能性がある。 - アタッチメントやアンカースクリューなどを併用した効果的な治療が可能
歯の動きを微調節するアタッチメントや歯の移動をサポートするアンカースクリュー(インプラント矯正とも呼ばれる)を併用すれば、スピーディーかつ安定的に歯が動く。
出っ歯をインビザライン矯正で治療するメリットをご覧いただき、いかがでしたか?
実際にインビザライン治療ができる出っ歯の症例であれば、たくさんのメリットがあることがお分りいただけたかと思います。
しかし、良い面だけを見て安易にインビザライン矯正を希望するのは危険です!
次は、インビザラインで出っ歯を治す際に伴うリスクを皆さんにご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
インビザラインで出っ歯を治すリスク
前の章ではインビザラインで出っ歯を治すメリットを解説しましたが、ここではインビザラインで出っ歯を治す際に伴うリスクを解説します。
まず、最初に踏まえておいてほしいインビザライン矯正の特徴をご紹介します。
- インビザラインは段階的に歯を動かす矯正方法
- マウスピースは1日20〜22時間以上の装着が必須
- 矯正治療に患者様の努力がある程度必要になる
では、インビザライン矯正で出っ歯を治す場合についてのリスクをご紹介します!
- 外科手術を併用しなくてはならないリスク
顎変形症や顎の大きなずれがある場合にはマウスピースだけでなく、外科手術が必要になる場合があります。 - 歯の移動距離が長い場合は時間がかかってしまうリスク
歯を大きく早く動かすという観点ではワイヤー矯正の方が優れており、インビザラインでは予想以上に時間がかかってしまう可能性があります。 - 奥歯の噛み合わせがずれるリスクがある
インビザラインは長時間マウスピースを着用している必要があり、奥歯がマウスピースを長時間噛み続けた状態になってしまうことがあります。その場合は奥歯の沈み込みが発生し、最終的に奥歯が噛み合わない状態になってしまうのです。 - 1日20〜22時間以上の装着時間を守らないと治療が滞るリスク
ワイヤー矯正は取り外せないことで半ば強制的に矯正が進んでいきますが、インビザラインの場合は徹底的な自己管理が求められます。食事や歯磨き以外の時間はほとんどマウスピースの装着が必要ですので、注意が必要です。 - 途中で虫歯や歯周病になり矯正治療がストップするリスク
問題がなければ非常にスムーズにいくのがインビザラインの特徴ですが、途中で虫歯や歯周病になってしまった場合は矯正をストップして治療が優先される可能性があります。その治療中に歯並びが変わった場合は、再び型取りからスタートとなるのでタイムロスができてしまいます。
インビザラインで出っ歯を治すリスクをご覧いただき、いかがでしたか?
インビザラインのメリットを見ただけで「インビザライン矯正が良い!」と決めつけてしまうことは危ないというのをご理解いただけたかと思います。
インビザライン矯正は強い痛みを感じにくかったり通院回数が少なかったりと良い面が多いですが、リスクにもしっかり目を向けておきましょう。
では、一体どのような歯並びならばインビザライン矯正ができるのか気になりますよね?
次の章でインビザライン矯正に向いている歯並びと向いていない歯並びを解説するので、ぜひ参考にしてください。
インビザライン矯正に向いている歯並びと向いていない歯並び
ここでは、インビザライン矯正に向いている歯並びと向いていない歯並びについて解説します。
インビザライン矯正に向いているとは、インビザライン矯正単独での治療が有効であり治療可能であるということです。
一方で、向いていない歯並びとはインビザライン単独での治療が望ましくなく高い治療効果を得るこが期待できない症例を意味します。
最後には、この章での解説を踏まえてご自身の歯並びがインビザライン治療に適しているかをセルフチェックする流れもご紹介しますので必見です!
インビザライン向きな歯並び
まず、インビザライン矯正が向いている歯並びについて解説します。
- 歯槽性の上顎前突(出っ歯)
- 軽度の骨格性上顎前突(出っ歯)
歯が唇側や舌側に傾斜しているタイプの出っ歯の場合は、インビザラインでは歯の傾斜をコントロールする治療ができるためインビザライン治療に向いている歯並びです。
また、軽度の軽度の骨格性上顎前突も抜歯を伴うインビザライン矯正で治療することができる歯並びです。
歯槽性の上顎前突での問題であれば心配いりませんが、他の症例を併発しているケースも多く見られます。
その場合、併発している問題がインビザラインでの治療に適していないとインビザライン矯正には向いていない歯並びとなるので注意が必要です。
以下は、出っ歯以外でインビザライン矯正に向いている歯並びになります。
これらの症例を併発している場合は、特に問題なくインビザライン矯正治療ができるので心配いりません。
- 叢生(歯がでこぼこに並んでいる)
- 開咬(上下前歯の間があいている)
- 反対咬合(受け口)
歯槽性の上顎前突であればインビザライン矯正に向いている歯並びということがお分りいただけましたか?
また、歯槽性の上顎前突で他の症例を併発していたとしても、『叢生』『開咬』『反対咬合(受け口』であればインビザライン矯正で治療できることもご理解いただけたかと思います。
では、次はインビザライン矯正治療に向いていない歯並びについて解説していきます。
インビザラインに不向きな歯並び
ここではインビザライン矯正に不向きな歯並びを紹介します。
- 重度の骨格性の顎前突(骨格的に顎の位置がずれている)
骨格的に顎の位置がずれている場合、インビザライン単独での矯正治療は難しくなりその他の処置を治療計画に練り込む必要があります。
また、実際にインビザライン単独での治療ができない場合は、ワイヤー矯正単独での治療も難しい場合が多いです。
インビザラインでもワイヤー矯正でも単独で治療できない場合は、以下のような対応を組み込んだ矯正治療で対応することになります。
- 外科手術
⇨上顎を後方に移動させる、または下顎を前方に移動させる - ヘッドギア(顎外固定式装置)
⇨歯茎と歯を後ろに下げる
- バイオネーター
⇨下顎の前方成長を促進する
また、インビザライン矯正に向いていないその他の症例もご紹介します。
出っ歯自体はインビザライン単独で治療できる場合であっても、以下のような問題を併発している場合にはインビザライン単独で治療することが困難になります。
- クロスバイト(奥歯のかみ合わせが左右にずれている)
- 左右非対称(正中が大幅にずれている)
⇨外科手術が必要になる場合が多い
歯槽性の上顎前突や軽度な骨格性の上顎前突であっても、『クロスバイト』『左右非対称』の症例を伴っている場合は、インビザライン単独での治療ができないということです。
ここまでご覧いただき、インビザライン単独で矯正治療ができるケースとできないケースがあることをおわかりいただけましたか?
この章で解説したことを踏まえて、インビザライン矯正できるかをセルフチェックする流れを紹介します。
歯科矯正医院へ相談に行く前にご自身の症例について理解を深めるために行うチェックなので、あくまでも参考とお考えください。
- 自分の出っ歯の種類をチェック(歯槽性?骨格性?)
歯槽性や軽度の骨格性の場合:②をチェックする
顎が大きくずれている骨格性の場合:整形外科なら可能、歯科矯正では不可 - 他の問題を併発していないかをチェック
併発していない:インビザライン矯正できる可能性がある
併発している:③をチェック - 併発している問題がインビザラインで治療できるかチェック
できる(叢生、開咬、反対咬合):インビザライン矯正できる可能性がある
できない(クロスバイト、左右非対称):他の矯正方法を検討
このセルフチェックはあくまでご自身の症例を把握するためのセルフチェックで、この結果が絶対ではありません。
歯科矯正医院によってはインビザラインに他の施術を組み合わせて対応してくれる場合もありますので、お悩みの場合はお近くの歯科矯正医院へ相談されることをおすすめします。
まとめ
インビザラインで出っ歯を治療した3つの治療例(症例)と出っ歯治療前の事前知識をご覧いただき、いかがでしたか?
全ての出っ歯がインビザライン単独で治療できるわけではないことがお分りいただけたかと思います。
では、この記事をまとめていきます!
- 出っ歯には3つの種類がある
- 骨格性の上顎前突
⇨顎骨の位置がずれていることが原因 - 歯槽性の上顎前突
⇨歯が内側や外側に傾斜していることが原因 - 2つが混合した上顎前突
- インビザライン単独で治療できる出っ歯(上顎前突)には条件がある
- 抜歯ありの場合と抜歯なしの場合を事前に3Dシュミレーションで比較できる
- インビザライン単独で治療ができる
歯槽性の上顎前突、軽度な骨格性の上顎前突 - インビザラインでの治療が向いていない歯並び
大きく顎がずれている骨格性の上顎前突
インビザライン単独では治療できる出っ歯の症例は限られるということがお分りいただけましたか?
最後に紹介したセルフチェックはご自身の歯並びがインビザライン単独で矯正できるかどうかを判断する一つの基準になるので、ぜひ歯科矯正医院へ相談に行く前にやってみてくださいね。
出っ歯を密かに治療しようと思ってマウスピースで治療しようと思ってます。
ちゃんと治療できますか…?