歯列矯正の装置には、マウスピース型歯科矯正装置の他に、歯の表側に装置(ブラケット)をつける「表側装置」、歯の裏側に装置(ブラケット)をつける「裏側装置」、一部分だけを矯正する「部分(前歯)矯正」があります。
◎マウスピース型歯科矯正装置
マウスピース矯正の特徴は、「装置が見えにくく目立たない」「痛みが少ない」「金属アレルギーの心配がない」「装置を外して食事ができる」だけでなく、3Dシミュレーションシステム(クリンチェック)で治療過程(歯の動き)を歯科矯正治療が開始する前に確認することができます。
- ・矯正装置が目立ちにくい
- ・痛みが少ない
- ・矯正装置を患者さまご自身で外すことができる
- ・ワイヤー矯正と比べ、通院回数が少ない
- ・歯周病やむし歯になりにくい
- ・金属アレルギーの方でも安心して治療が可能
- ・楽器を演奏する際に制限が少ない
- ・コンタクトスポーツで怪我をしにくい
マウスピース矯正(インビザライン)のメリット
- ・1日に20時間以上、歯に装着する必要がある
- ・患者様の協力度に大きく依存する治療法である
- ・歯並び、噛み合わせによっては治療できない場合がある
マウスピース矯正(インビザライン)のデメリット
◎表側の矯正装置(ワイヤー矯正)
表側矯正は、装置の素材や色(白・透明など)によって「審美(クリア)装置」、「メタル装置」に分類されます。
最も伝統的な歯列矯正治療は「表側矯正」です。表側矯正とは、歯の表側に装置(ブラケット)をつけて行う歯列矯正治療のことです。表側矯正には、「審美(クリア)装置」、「メタル装置」がありますので、それぞれのメリット・デメリット等を説明いたします。
〇審美(クリア)装置
審美(クリア)ブラケットは、銀色の金属ブラケットではなく、歯と同系色のブラケットを用いた表側矯正治療装置のひとつです。ブラケットが歯の色に近いため、銀色の金属ブラケットに比べて目立たずに歯列矯正治療を行うことができます。ワイヤー矯正の中でもできる限り装置が目立つのを気にされる方に適した装置です。また、ワイヤーを金属色のものではなく、ご要望される場合は白色のワイヤーで歯列矯正を行うことも可能です。ワイヤーには白いコーティングがしておりますので、審美性に優れ、歯列矯正治療していることに気づかれにくいです。
- ・あらゆる症例での治療が可能(一部の歯並び、噛み合わせでは、外科手術が必要な場合あり)
- ・矯正治療費が裏側矯正に比べ安いことが多い
- ・メタル装置と比べると目立ちにくい
審美(クリア)装置のメリット
- ・装置の異物感を感じる場合がある
- ・痛みを強く感じることが多い
- ・食事や歯磨きがしづらい
- ・むし歯や歯周病になるリスクが高くなる
審美(クリア)装置のデメリット
〇メタル装置(金属性)
メタル装置(ブラケット)はブラケットが目立つという難点がありますが、金属の特性により、薄くて丈夫です。 また、他のクリアブラケットなどの装置に比べて、比較的低コストで治療を行えます。 外からの見た目にはあまりこだわらず、治療費をできる限り抑えて歯列矯正治療を行いたい方に合った装置です。
- ・あらゆる症例での治療が可能(一部の歯並び、噛み合わせでは、外科手術が必要な場合あり)
- ・治療費が比較的安い
- ・審美(クリア)装置と比べると装着感が良い
メタルブラケットのメリット
- ・装置が銀色のため目立つ
- ・痛みを強く感じることが多い
- ・金属アレルギーのリスクが高い
- ・装置の異物感を感じる場合がある
- ・食事や歯磨きがしづらい
- ・むし歯や歯周病になるリスクが高くなる
メタルブラケットのデメリット
◎リンガル矯正(舌側矯正・裏側矯正)
上下ともに歯の裏側に装置を付ける「フルリンガル」と、上あごは裏側・下あごは表側に装置を付ける「ハーフリンガル」の2種類があります。従来のワイヤーを用いる歯列矯正では表側矯正が主流でしたが、「歯列矯正中であることをなるべく気づかれたくない」というニーズに応える手段として「裏側矯正(舌側矯正)」が誕生しました。裏側矯正(舌側矯正)は、従来の表側矯正では歯の表面に付けていた金属のブラケットとワイヤーを歯の裏側につけ、外から見ても気づかれにくい状態で歯並びの改善を可能にした治療法です。裏側矯正には、「フルリンガル(上下裏側)」と「ハーフリンガル(上あごは裏側・下あごは表側)」があります。
〇フルリンガル(上下裏側)
- ・表側装置に比べて矯正装置が目立ちにくい
- ・前歯を後ろに下げる動きが得意
- ・舌突出癖の防止になり、矯正治療後の後戻りのリスクが減る
フルリンガルのメリット
- ・舌に装置が触れるため違和感が強い
- ・発音しにくい
- ・食事がしにくい
- ・歯磨きがしづらい
- ・痛みを強く感じることが多い
- ・表側矯正よりも治療費が高くなることが多い
- ・通院時の治療時間が比較的長くなることがある
フルリンガルのデメリット
〇ハーフリンガル(上あごは裏側・下あごは表側)
- ・表側装置に比べて矯正装置が目立ちにくい
- ・フルリンガルよりも治療費がリーズナブルなことが多い
- ・フルリンガルよりも舌の違和感や発音への影響が少ない
ハーフリンガルのメリット
- ・表側矯正よりも治療費が高い
- ・痛みを強く感じることが多い
- ・発音がしづらくなることがある
- ・表側矯正よりも治療費が高くなることが多い
- ・通院時の治療時間が比較的長くなることがある
ハーフリンガルのデメリット
◎部分矯正(前歯矯正・八重歯の矯正)
マウスピース型矯正装置(インビザライン)やワイヤー矯正(表側・裏側)を用いて、部分的な歯を移動させ、歯並びを改善する治療方法です。歯列矯正治療は一般的に、高額かつ1年以上の治療期間を必要とすることが多く…
- ・前歯の歯並びだけ治したい
- ・ガタガタの八重歯(犬歯)のみが気になる
- ・歯列矯正をしたいけど、治療費が高額で躊躇してしまう
- ・歯並び、噛み合わせが悪いため、被せ物が入らないとかかりつけの歯医者に言われた
というご要望の患者さまにはハードルが高い治療法となっていました。しかし、前歯のみを改善する部分矯正の治療期間は約4~10ヵ月月間と、全体の歯を治療する表側矯正・裏側矯正(舌側矯正)と比較して短期間で歯並びを改善できます。治療期間が短い分、比較的リーズナブルな料金で治療を行うことが可能です。
- ・抜歯の可能性が低い
- ・治療期間が1年以内となることが多い
- ・歯列矯正に伴う痛みが少ない
- ・治療費がリーズナブル
部分矯正のメリット
- ・奥歯の噛み合わせに問題があると前歯のみの治療はできない可能性がある
- ・矯正装置を表側の歯につける方法だと目立ってしまう
- ・歯並びの重なりの程度が大きい場合は、適応できない場合がある
部分矯正のデメリット
◎非抜歯矯正(歯を抜かない矯正)
新しい歯列矯正装置やマウスピース矯正装置(インビザライン)、マイクロインプラント(インプラントアンカー)等、診断技術や歯科矯正装置の向上により、歯を抜かない歯科矯正治療を行うことができる可能性が高くなりました。従来の歯科矯正による治療(ワイヤー矯正)ですと抜歯だった歯並び、噛み合わせの多くが、現在では歯を抜かずに歯列矯正が可能となる場合が多くなっています。当院のデータでは、約85%の患者さまが歯を抜かずに歯科矯正治療を行っています(親知らずの抜歯は除く)。過去に歯を抜かないと歯列矯正治療はできないと説明を受けた方も、当院では歯を抜かない矯正治療で結果にご満足いただいている方が多くいらっしゃいます。
◎大人の矯正
子どものうちに行うものというイメージが強い歯列矯正ですが、大人になってからでも歯列矯正治療を行うことは可能です。大人の矯正治療を始めるタイミングですが、結論からいうと成人の歯列矯正はいつでも始めることができます。大人の歯列矯正は、「いつはじめるか」ではなく「いつまでに完了したいか」という部分を意識して、計画的に歯列矯正治療を行うと良いと考えています。歯列矯正は40代、50代で始める患者さまも多く、60代や70代で矯正を始める場合もあります。口腔内が健康であれば、何歳になっても問題なく歯列矯正すること可能です。
- ・見た目のコンプレックスを解消することができる
- ・むし歯や歯周病の予防になる
- ・治療のスケジュールが立てやすい
大人矯正のメリット
- ・治療中の見た目が気になる
- ・治療に伴う痛みや違和感がある
- ・ワイヤー矯正の場合、虫歯や歯周病になりやすい
大人矯正のデメリット
◎子どもの矯正
歯列矯正治療は、小児矯正と成人矯正の2つに大きく分けることができます。子どもが受けるのが小児矯正で、大人が受けるのが成人矯正です。さらに詳しくご説明すると、小児矯正はⅠ期治療とⅡ期治療の2つに分けられます。そして、Ⅰ期治療(※8~11歳)を小児矯正と呼び、Ⅱ期治療(※12歳~)は成人矯正と分類されることもあります。
※個人差により年齢は前後する場合があります
一般的に小学生から始める歯列矯正治療がⅠ期治療で、中学・高校生からの歯列矯正治療は成人矯正と同等の扱いとなることが多いです。小児矯正の場合は、歯の生え変わり時期や成長過程に合わせて矯正治療を開始する最適なタイミングがありますが、治療開始が早ければ早いほど良いといったことはありません。
- ・成長を利用した矯正治療が可能
- ・不正咬合を早期に治療ができる
- ・むし歯のチェックが定期的に行える
子ども矯正のメリット
- ・治療期間が長くなりやすい
- ・治療費用が高額になることが多い
- ・転勤や引っ越しで治療が無駄になってしまう可能性がある
子ども矯正のデメリット
◎後戻り・再矯正治療
歯列矯正治療後に歯並びが安定せず、また乱れてしまうことがあります。これを矯正治療後の「後戻り」と言います。人間の歯並びは加齢変化と同じように、時間の経過とともに必ず変化していきます。様々な理由によって、残念ながら後戻りを生じることがあります。この矯正治療後の後戻りに対して、再矯正治療を行うことが可能です。また、過去に他院様で矯正治療を受けられた方の再矯正治療に関しても、治療を行っております。矯正治療後の後戻りにお悩みの方、まずは一度ご相談ください。過去に歯列矯正治療を受けられた方の場合は、後戻りの原因、治療後の時間経過、再発した不正咬合の程度などを元に勘案し、患者さまごとの状況に応じて治療プランをご説明いたします。治療期間や費用は症状の程度により異なりますが、後戻りの程度がわずかであれば、6〜12ヵ月程度で再治療を完了できる場合が多いです。
◎アンカースクリュー
歯科矯正用アンカースクリューとは、チタン製の小さな(直径1.4mm前後,長さ6mm程度)医療用ネジのことです。これを引っ張る土台(固定源)にして、医療用ゴムで歯に力をかけることにより、歯を効率的に動かすことができます。この方法は、矯正治療の期間の短縮化や、歯の動かし方の可能性を広げる有効な方法として、1990年代後半に登場した治療法です。
- ・従来では難しかった方向へ歯の移動が可能になる
- ・非抜歯矯正治療が可能になることがある
- ・ヘッドギアなどの頭にかぶる装置を使う必要性がなくなる
- ・外科矯正治療を回避できる可能性がある
- ・より良好な治療結果が得られる
- ・治療期間が短くなる
歯科矯正用アンカースクリューのメリット
- ・処置の際、わずかに侵襲がある
- ・約10%確率で脱落することがある
- ・金属アレルギーの方には使用できないことがある
歯科矯正用アンカースクリューのデメリット
◎リテーナー(保定装置)
リテーナーとは保定装置のことで矯正装置を外した後の歯並びが後戻りしないように使用する装置のことです。歯科矯正装置で移動させた歯の周囲組織は作り替えが起こります。作り替えが終了するまでは時間がかかり、その期間の間、歯には元の場所に戻ろうとする力が働いてしまいます。「後戻り」といわれるこの力は、新しい組織が作られるまで、矯正治療後6カ月~1年ほど特に強く働くため、2年以上はリテーナー(保定装置)を装着しておく必要があります。このリテーナーには種類があり、取り外しできるものとできないものがあります。当院では基本的に取り外しできるもの(透明マウスピースタイプ)を使用します。取り外しできるタイプのものでも後戻りの力が強く働く初めの1年の間は、歯磨きや食事の時以外は外さないようにしていただきます。リテーナーを装着してから1年を過ぎると徐々に歯は安定してきますので、患者さまの状態により、1日に10時間装着や就寝時のみ使用といったように、徐々に装着時間を減らしていきます。リテーナーは矯正治療後の歯並びを保つために重要であるため、最後まで慎重に保定を完了させ、矯正治療の効果を最大限に高めていただきたいと思います。