
柏 英希
インビザライン(マウスピース矯正)がどれくらいの痛みなのかを知ることができます。
また、痛みの原因と対処法の紹介に加え、痛みが出た際にやってはいけないことについても触れています。
「歯の矯正は痛い」と言う話を聞いたことがありますか? 当院はインビザライン矯正専門の歯科医院ですが、やはり痛みについては多くのご相談が寄せられます。
インビザラインは、歯を一気に動かすのではなく、少しずつ段階的に動かすことができるため、日々の痛みが分散されます。
ワイヤー矯正は、すべての歯をワイヤーでつなぎ、一気に歯を動かすためのテンションをかけるため、強い痛みを感じる人が多いようです。
本記事では「インビザラインはどのくらい痛いのか?」といった疑問や、インビザライン治療の最中で痛みを感じる6つの原因と6つの対処法を、インビザライン矯正治療の専門医が詳しく解説していきます。
インビザライン矯正治療はどのくらいの痛いのか

インビザライン矯正を始める前に、治療の痛みがどれほどなのかを知りたい方は多いはずです。まずは、インビザラインの痛みがイメージできるように解説していこうと思います。
併せて、一般的な矯正治療法であるワイヤー矯正との比較もご紹介します。
インビザラインの痛み
インビザラインは数ある歯科矯正の中でも痛み少ない治療法です。
その理由は、一気に歯を動かすのではなく、治療期間内に7日~10日のスパンで何十枚ものアライナー※を交換して徐々に歯を動かすので、一度に大きな矯正力がかからないためです。
※ アライナー
マウスピース矯正装置のこと。
実際に患者さまが痛いと感じる際の感想としては、以下のようなものが挙げられます。
- 窮屈な感じ
- 少し圧迫感がある
- 歯が覆われていて違和感
- マウスピースが内頬や舌に少し当たる
上記の通り、インビザラインは多少の痛みを伴いますが、我慢できないほどの痛みにつながることはほぼありません。
食事の際はマウスピースを外せるので、食事での噛み合わせでかなり強い痛みが生じることもほとんどないのです。
ワイヤー矯正とインビザラインの痛み比較
インビザラインが痛みの少ない矯正であることをご理解いただけたところで、ワイヤー矯正と比較していこうと思います。
ワイヤー矯正は、矯正装置の装着や調整から数日は強い痛みを伴う可能性があります。しかし、インビザラインは矯正期間中痛みが分散されているので、強い痛みを感じることはほとんどありません。
7日~10日を目安に新しいアライナーへ交換していきますが、ワイヤー矯正ほどの強い痛みを感じる可能性は少ないと言えます。
矯正方法 | 患者さまの痛みの感想 |
インビザライン![]() | 〇窮屈な感じ 〇圧迫感がちょっとある 〇歯が覆われていて違和感 〇マウスピースが内頬や舌に少し当たる |
ワイヤー矯正![]() | 〇噛み合わせると痛む 〇痛くて食いしばれない 〇強く噛むと痛い 〇噛む力が必要な食べ物を食べると痛む 〇矯正装置があたってできた口内炎が痛む 〇内頬を噛んでしまって痛い |
インビザラインでは歯が動く痛みを強く感じるというよりは、「マウスピースによる歯への圧迫感や違和感」を痛みとして感じる人が多くいらっしゃいます。
ワイヤー矯正では、段階的に歯を動かすのではなく一気に動かすため、ワイヤーを装着して数日感はかなり強い痛みを伴う人も多いようです。また、歯が動く痛みだけでなく、食事で噛み合わせをした際に痛みが生じるケースも多く、さらにワイヤー矯正は口内を傷つけるリスクがあるため、「ワイヤーによる口内炎」に悩まされる人も多数います。
結論として、「ワイヤー矯正」よりも「インビザライン」の方が痛みの少ない矯正方法となります。
しかし、インビザラインでも痛みは多少なりとも生じてしまいますが「痛み」にも重要な意味があるのです。
インビザラインの痛みは基本的には歯が動いている証拠

まず最初に、矯正治療の痛みは治療が進んでいる証であるということを説明します。下記のイラストをご参照ください。

矯正治療によって歯が移動する場合、イラストのように歯槽骨の中で歯根膜の伸び縮みします。
インビザライン矯正がワイヤー矯正よりも痛みの少ない方法であることは先に触れた通りですが、ワイヤー矯正の痛みは「矯正装置が口内に当たる」など、歯の移動以外の痛みが多分にあります。
その一方で、インビザラインの痛みは基本的に「歯の移動そのものの痛み」であると言うことができます。
歯が動くときに痛みを感じることは、どの矯正方法であれ自然なことです。
しかし、一気に歯を動かそうとするワイヤー矯正と、段階的に歯を動かそうとするインビザラインとでは、痛みの強さと質に違いがあります。
となれば、「痛みの強いワイヤー矯正の方が早く歯が動くのでは?」という疑問が頭をよぎりますが、実はそうでもありません。
- インビザライン:最大1.0mm
- ワイヤー矯正:最大1.0mm
ワイヤー矯正とインビザラインでは、実は1カ月で移動できる歯の距離が変わりません。

柏先生
痛みの強さはさまざまですが、「痛みが強い = 効果が高い」というわけではないので注意しましょう。
インビザライン矯正中に痛みを感じる6つの原因

ワイヤー矯正よりも痛みが少ないとされるインビザラインですが、それでも痛みを感じるケースもあります。 本項では「インビザラインで痛いと感じる場合の6つの原因」を解説していきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
- 痛い原因①:矯正によって歯が圧迫されている
- 痛い原因②:新しいマウスピース(アライナー)にまだ慣れていない
- 痛い原因③:着脱時アタッチメントに引っかかっている
- 痛い原因④:マウスピースやアタッチメントが口内を傷つけている
- 痛い原因⑤:歯が後戻りしてしまった
- 痛い原因⑥:抜歯した部分に痛みがある
痛みの原因を把握することで対策が取りやすくなるので、ひと通り覚えておくことをお勧めいたします。
痛い原因①:矯正によって歯が圧迫されている
ひとつ目に考えられる原因は、「矯正によって歯が圧迫されていること」です。
インビザラインは段階的に歯に負荷をかけて動かしていく方法ですが、それでもマウスピースを装着することによって歯は圧迫されます。

矯正治療で実際に歯が動くのには、「骨の代謝」が大きく影響しています。
まず矯正装置を装着すると歯の根っこの周りにある歯根膜という繊維からできた薄い膜が引っ張られ、引っ張られた側には骨芽細胞と呼ばれる骨を作る細胞ができて、新しい骨が作られます。
反対に縮んだ側にはマクロファージという細胞が作られ、血管の中に眠っている『破骨細胞』を引き起こすのです。
この破骨細胞が骨を吸収する骨の代謝の性質により歯が動くのです。
骨に埋まっている歯に力を加えて動かすわけですから、無痛というのはおかしく、少なからず圧迫されるような痛みが生じるのは仕方がないことです。
対処法としては、「ひとつ前のマウスピースに戻す」ことを歯科医に相談することです。
痛い原因②:新しいマウスピースにまだ慣れていない
2つ目に考えられる原因は、「新しいマウスピース(アライナー)にまだ慣れていないこと」です。
インビザラインは約7日ごとに新しいアライナーへと自分で交換していく特徴があり、これによって通院の手間が省けます。
毎日20時間以上マウスピースを装着することを想定して治療計画が立てられているので、患者側はこれを責任持って遂行する必要があります。
- インビザラインのアライナー1枚:0.25mm
「インビザライン」はワイヤー矯正よりも一回にかかる負担は少ないですが、「次のアライナーへ交換すること」はそれまでとは違う矯正力がかかるということです。
そのマウスピースの型に慣れていないうちは、痛みが生じてしまっても仕方がありません。
わずかに異なるマウスピースの交換を続けていくことで最終的に歯列や噛み合わせが整うのですから、慣れるまでには少し痛みがでることは想定内です。
対処法としては、『1つ前のマウスピースに戻す』ことを歯科医に相談することです。
痛い原因③:着脱時アタッチメントに引っかかっている
3つ目に考えられる原因は、「着脱時アタッチメントに引っかかっていること」です。
インビザライン矯正では、マウスピースを装着するだけでなく歯に白いアタッチメントをつける必要があります。
このアタッチメントがマウスピースの着脱時に引っかかってしまい痛みを生じる可能性があるということです。

実際にこのアタッチメントにはマウスピースが歯に加える力を調節する役割があり、一度つけたら矯正治療が終わるまで付けていなければなりません。
厚さ1mm程度の白いレジン素材でできたアタッチメントの形には、丸状・三角状・四角状があり、この順番にサイズ・強さが大きくなっていきます。
より強い矯正力をかけたい部分には四角状のアタッチメントが必要になるということですね。
対処法としては、「専用の着脱用器具を使う」になるので、歯科医に相談して検討してみましょう。
痛い原因④:マウスピースやアタッチメントが口内を傷つけている
4つ目に考えられる原因は、「マウスピースやアタッチメントが口内を傷つけていること」です。
アライナーはインビザライン社で製作され検品されてから日本に送られ患者さんの元に届くわけですが、中には研磨不足で口の中を傷つけてしまうマウスピースもあります。
口内は弱い皮膚ですのでわずかな出っ張りでも当たれば、傷や痛みが発生する可能性が高いのです。また、アタッチメントがついている場合には、そのアタッチメントによる傷を疑う必要もあります。
マウスピース装着時はアタッチメントが気にならなくても、食事などでマウスピースを外した時に口内を傷つけている可能性があります。
対処法としては、「マウスピースの尖っている部分を削る」になるので、歯科医に相談して検討してみましょう
痛い原因⑤:歯が後戻りしてしまった
5つ目に考えられる原因は、「歯が後戻りしてしまったこと」です。
インビザライン矯正ではマウスピースを20時間以上装着することを前提として治療が計画されているのですが、しばらくマウスピースを装着しない期間があると歯が後戻りしてしまうのです。
歯が後戻りしてしまってから再び同じマウスピースを装着すると、その際に痛みを感じることがあります。
矯正中の歯はグラグラしている状態ですので、そこでマウスピースによる矯正がなくなると元の位置に簡単に戻ってしまうのです。
また、インビザラインでの矯正が終わったあとに必要な保定装置(リテーナー)を装着しなかった場合にも、歯が後戻りする可能性があります。
「矯正の治療自体は終わったからいいや」なんて甘く考えて保定装置の装着をサボっていると、保定装置自体が装着できなくなり無理にはめようとすると痛みを伴うことがあります。
対処法としては、「再矯正の検討」。歯科医に相談して検討してみましょう。
痛い原因⑥:抜歯した部分に痛みがある
6つ目に考えられる原因は、「抜歯した部分に痛みがあること」です。
マウスピース矯正(インビザライン)では、抜歯を含む矯正ができないと思われがちですが、実は症状が重度の場合には抜歯を行って矯正することもできます。
インビザラインでは痛みが少ないため、抜歯をした歯の痛みの方が「痛い」と感じてしまう場合があります。
その場合には、「鎮痛剤をもらう」などの対処をしていきましょう。
痛みを感じたときの6つの対処法

- 対処法①:ひとつ前のマウスピースに戻す
- 対処法②:専用の着脱用器具を使う
- 対処法③:マウスピースの尖っている部分を削る
- 対処法④:なるべく長時間外さない
- 対処法⑤:鎮痛剤を処方してもらう
- 対処法⑥:治療計画の変更
対処法①:ひとつ前のマウスピースに戻す
対策のひとつ目は、「ひとつ前のマウスピースに戻して痛みの様子をみる」です。
新しいアライナーに交換して強い痛みが消えない場合は、ひとつ前のマウスピースに戻して痛みの様子を見ましょう。
実際新しいアライナーに交換して痛みや違和感がかなり強い場合には、ひとつ前のアライナーを数日装着してからまた次のアライナーに交換するとあまり痛みがなかったというケースがあります。
装着時間が短い日があった場合には、まだ新しいアライナーに対応できるよう歯が動いていなかった可能性があります。
対処法②:専用の着脱用器具を使う
対策の2つ目は、「専用の着脱用器具を使うこと」です。
前の章で、インビザライン矯正では歯にアタッチメントを装着する必要があることをすでにお伝えしましたが、着脱時にこのアタッチメントが邪魔をして「うまくはまらない」、「うまく外せない」ことがあります。
無理にマウスピースをはめたり外したりして痛みがでるようであれば、このようなスプーンを使用することをおすすめします。

実際に、マウスピースを無理やり力ずくで着脱すると「アタッチメントが外れてしまう事例」が多くあります。
アタッチメントが外れるとアタッチメントが矯正で果たしている重要な役割がなくなり、矯正の効果が弱まってしまう可能性もあるので取り扱いには注意したいところです。
対処法③:マウスピースの尖っている部分を削る
対策の三つ目は、「マウスピースの尖っている部分を削る」です。
インビザラインのマウスピースは、米国アライン・テクノロジー社にて製作・検品されてから患者さんの元に届きます。
マウスピースの中にはわずかな研磨不足があり、実際はめた際に口内でぶつかってしまったり気になってしまったりする場合もあります。
それを放置すると毎回同じ場所がすれて痛みや口内炎に繋がるリスクがあるため、紙やすりでマウスピースの突出している部分や気になる部分を磨くことをおすすめします。

対処法④:なるべく長時間外さない
対策の4つ目は、「なるべく長時間外さない」です。
治療期間中に「おかしいな…ちゃんとはまってるかな? この間まで入ってたのに」などの疑問を持つ方は珍しくありません。はまりにくい感じが出たり、違和感を覚えたりしたときは要注意です。
このように感じたら、できるだけ長時間マウスピースを装着して、歯が矯正プラン通りに動いてくれるのを待ちましょう。
はまり具合がしっくりとくる感じがあるようなら、あとは元のペースで約7日ごとに新しいアライナーに交換するのも忘れずに行うようにしましょう。 確認ですが、「インビザライン矯正」ではマウスピースを外して良いとされているのは以下のときです。
- 1日3度の食事
- 歯磨き
- マウスピースのお手入れ
取り外しができることは利点ですが、しっかり管理しないと矯正効果が出ない上に、痛い思いをすることになってしまうので要注意です。
対処法⑤:鎮痛剤を処方してもらう
対策の5つ目は、「鎮痛剤を処方してもらう」です。
やはりおかしいなと感じた場合や痛みにどうしても耐えられないという場合は、医師に相談して鎮痛剤をもらうのが安心です。
あまりに強い痛みは自分自身で対策するのも難しいと思うので、気軽に先生に相談できるような関係を築いておくこともストレスのない矯正生活を送るためのポイントです。
対処法⑥:治療計画の変更 / 再矯正の検討
対策の6つ目は、「治療計画の変更 / 再矯正の検討」です。
こちらは最終手段ですが、どうしても痛い場合には無理に歯を動かそうとしてしまっている可能性があるので、治療計画の変更も必要になってきます。
通常、インビザライン矯正に知識のある歯科矯正医が治療計画でミスをすることは無いはずですが、経験の浅い歯科医師やインビザライン専門に行っていない医師だと、稀に起こってしまうようです。
痛みが出た際にやってはいけないこと

痛みが出た場合の対処法をご覧いただきましたが、この章では矯正治療中に痛みが出た際やってはいけないことをご紹介します。
- 勝手にインビザラインの着用をやめる
- 市販の痛み止めをむやみに服用する
- 余計な刺激を与える
矯正治療の最中、痛みに耐えられずついやってしまいがちな行動ですが、治療の効果が出にくくなったり、痛みが強くなってしまったりする可能性があります。
逆に言えば、これさえやらなければ、さほど痛みを感じることなく矯正治療が完了する可能性が高くなるということです。
勝手にインビザラインの着用をやめる
矯正治療中に痛みが出た際、勝手にマウスピース着用をやめてはいけません。その理由は以下の通りです。
- 歯が動いている痛みなら問題ない
- インビザラインを着用しないと歯が後戻りする可能性がある
なるべく早く歯科矯正医院へ相談に行くことが1番ですが、それまでは装着しても痛くないマウスピースを装着し歯が後戻りするのを防いでおきましょう。
矯正治療は進まなくても歯が後戻りしなければ後々の矯正治療がスムーズに進むので、勝手にマウスピースを外すことはやめましょう。
市販の痛み止めをむやみに服用する
矯正治療中に痛みが出た際、市販の痛み止めをむやみに服用してはいけません。
矯正治療は人為的に炎症を起こして歯を移動させていますが、頻繁に抗炎症作用の強い痛み止めを服用すると炎症が抑えられて歯が動きにくくなります。
- 抗炎症作用が強い可能性がある
- 胃腸に負担となる
手に入りやすい市販の痛み止めを服用し続けると、矯正治療自体に影響を及ぼしてしまう可能性があるのです。
痛みが気になる人は、歯の移動を阻害せずに痛みを抑えることのできる薬を歯科矯正医院で処方してもらうようにしましょう。
余計な刺激を加える
矯正治療中に痛みが出た際、余計な刺激を加えてはいけません。
- 固いものを噛む
- 冷やす
固いものを噛むことで不安定な歯に余計な圧力がかかり、さらに痛みが増す可能性があります。
食事はなるべく柔らかく、噛むことにあまり力を使わないものを選ぶようにしましょう。
また、ワイヤー矯正の場合使用しているワイヤーの素材によっては、冷やすと強制力が弱まることがあります。
しかしマウスピースはそのような効果が期待できないので、冷やしても意味がないのです。

柏先生
矯正治療中に痛みが出た際やってはいけないことをご覧いただき、いかがでしたか?
マウスピースを外したり市販の痛み止めを服用したりすることは、歯科矯正医に相談する前にご自身の判断でやってしまいがちな行為ですよね。
矯正治療に高い効果を求めるのであれば、なるべくやらないように気をつけていきましょう。
この記事のまとめ

柏 英希
- ワイヤー矯正より強い痛みを感じにくい
- インビザラインは新しいアライナーに交換する時に痛みがでる可能性がある
- インビザラインでは歯が圧迫されている感じが出やすい
- アタッチメントは痛みの原因にもなるが、スムーズな矯正を支えている大きな役割がある ・患者さまも痛みが出ないように矯正のルールを守るべき
記事をご覧いただき、ありがとうございました。ワイヤー矯正よりも痛みの度合いが少ない上に、対処方法まであることをお分りいただけましたでしょうか?
しっかりと対策しておけば、痛みが出てしまった場合でも焦らずに対応できると思います。しかし、まずは装着時間を守ったり歯やマウスピースのお手入れに気をつかったりすることが予防に繋がりますので頑張ってみてください。