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患者さまごとの歯科矯正
妊娠中の歯科矯正

妊娠中の歯科矯正 – 安全性や出産前後の注意点を解説

Date: 2024.07.19
この記事を読んでわかること
柏 英希
インビザラインDr.
柏 英希

矯正治療中に妊娠が発覚したときの対応や、取るべき行動が分かります。妊娠中に歯科矯正を始めるリスクについてもご紹介しています。

はじめに、歯科矯正自体が母体や赤ちゃんに悪い影響を与えることはありません。矯正治療中に妊娠された方もいらっしゃると思いますので、まずこの点はご安心ください。

結婚式に向けた「ブライダル矯正」の最中に妊娠が分かることは珍しくありません。また、産休を機にと歯科矯正を始める方もいらっしゃいます。

どちらの場合も歯科矯正の継続・開始は可能ですが、「妊娠期を利用して歯科矯正を始める」は、あまりお勧めしていません。

本記事では、矯正治療中に妊娠が分かった場合の対応や、なぜ妊娠期に歯科矯正を始めない方がよいのかなどについてご説明していきます。

「歯科矯正中に妊娠した」と「妊娠中に歯科矯正を始めたい」はどちらも問題ない

インビザラインDr.
柏先生

妊娠中に歯の矯正をすることは問題ありません。しかし、平時よりも注意するポイントが増えます。

「矯正治療をしている最中に妊娠が分かった」、「妊娠期間中に歯並びの矯正をしたい」。

どちらの場合でも矯正治療は可能です。しかし後者の場合、矯正の専門医師として妊婦さんに歯科矯正を積極的に勧めることはありません。

それはなぜか? 妊娠時期によっては治療の継続が難しい場合がありますし、リスクや注意点が増えるためです。

もし希望される場合は、注意点やリスクを十分に理解した上で治療に臨むようにしましょう。

妊娠中の歯科矯正を積極的にお勧めしない理由

インビザラインDr.
柏先生

妊娠中は、平時にはないリスクを伴います。また妊婦さんの体調面を考慮しても、積極的に妊娠中の歯科矯正を勧める歯科医師は少ないでしょう。

前提として、歯科矯正治療は歯の中に異物を入れるため、個人差はあるにせよ多少の不快感があります。また、少なからず痛みを伴いますし、定期的に歯科医院へ足を運ぶ必要もあります。

上記を踏まえたうえで、妊娠中の方に歯科矯正をお勧めしない理由が大きく2つあります。

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この章の目次 – 妊娠中に歯科矯正をお勧めしない理由
  • 妊娠中は平常時には無いリスクと注意点があるから
  • 妊婦さんは体調が安定しないから

妊娠中は平常時には無いリスクと注意点があるから

妊婦さん特有のリスクと注意点は下記の通りです。

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妊婦さん特有のリスクと注意点
  • 妊娠性歯肉炎を患う可能性がある
  • レントゲンを避ける必要がある
  • 麻酔を避ける必要がある
  • 痛み止めを飲まない方がよいため

妊娠性歯肉炎を患う可能性がある

ひとつ目のリスクは「妊娠性歯肉炎」。

食生活の変化や女性ホルモンの増加、またはつわりなどの影響により、妊娠中は歯肉炎を発症しやすくなります。これを「妊娠性歯肉炎」といいます。

つわりがひどい時期は、歯ブラシを口に入れることも難儀になる方がいますので、口内を清潔な状態に保つこともひと苦労です。

レントゲンを避ける必要がある

2つ目の理由は「レントゲン」。つまり放射線のお話しです。

「妊娠中にレントゲンを撮ることは避けた方が良い」という話を聞いたことがあると思います。なぜかというと、レントゲンは放射を利用して体内を撮影する仕組みになっているからです。

そして、歯科矯正では治療を開始する前に口内のレントゲンを撮る必要があります。

  • 腹部から離れたお口の中を撮るので問題ない
  • レントゲンによる放射は体に影響がない

という話を耳にします。上記は恐らく、どちらも正しいご意見です。

しかし、だからと言って「妊娠中は積極的にレントゲンを撮ろう」という考えには至りません。高確率で問題無いはずですが、万一を考えると避けた方が無難でしょう。

麻酔を避ける必要がある

3つ目は麻酔です。

歯科矯正治療の初期段階で、顎骨部分に「アンカースクリュー」というチタン製の小さな医療用ネジを打ち込むことがあります。

骨自体に痛覚はありませんが、周囲の歯ぐきは痛みを感じるため、アンカースクリューを打つ際には局所麻酔を行います。

「妊娠中に麻酔はよくない」ことは、どなたも想像に難くないでしょう。

「歯科矯正で使用する麻酔は少量だし、局所なので赤ちゃんに影響は無い」という歯科医師はいますし、これは間違った考えではありません。

ですが、少しでもリスクがあるのであれば、やはり避けるべきだと言えます。

インビザラインDr.
柏先生

余談ですが、歯科矯正のレントゲン撮影は治療の初期段階で行うことが多いので、矯正治療中に妊娠された方は、ご心配いただかなくても大丈夫です。

痛み止めを飲まない方がよいため

歯科矯正は痛みを伴います。

当院で行っているインビザライン(マウスピース矯正)は、痛みの少ない治療法として知られていますが、ワイヤー矯正は締め付けるような痛みに悩まされることが多い矯正治療法です。

矯正治療中に痛み止めを飲むことは問題ありませんが、妊娠中は避けた方が賢明です。種類によっては飲んで大丈夫な薬もありますが、レントゲンや麻酔と同様に、やはり積極的にというわけではありません。

妊婦さんは体調が安定しないから

妊婦さんは体調不良に陥りがちです。貧血、便秘、腰痛…と、その例は枚挙にいとまがありません。中でも代表的な症状は、やはり「つわり」。個人差はあるにせよ、その辛さは大変なもののようです。

吐き気を催すつわり。そんな折、口の中に矯正器具が入っていたらどうでしょうか? 歯ブラシを口に入れることも嫌なのに、ワイヤーにせよマウスピースにせよ、異物が口内にあることに耐えられるのかは甚だ疑問です。

また矯正治療中は器具の調整が必要なため、定期的に歯科医院へ足を運ぶことになります。

体調が優れない中、口内には矯正装置が入っていて不快だし、歯医者にもいかなければいけない。ともすれば、やはり妊娠中の矯正治療は控えるべきと言わざるを得ません。

矯正治療中に妊娠が分かった場合の対策

インビザラインDr.
柏先生

最も重要なのは、医師に報告することです。

前章では、「妊娠中の歯科矯正を積極的にお勧めしない理由」について話しました。

しかし、「妊娠中に歯科矯正を始めたい」という人ばかりではありません。もしかすると「矯正治療中に妊娠が発覚した」というケースの方が多いかもしれません。

本章では、矯正中に妊娠が分かった方に役立つアドバイスをしていきます。

まずは医師に連絡する

安全な治療のためにお願いしたいのは、医師への報告です。

統計上では妊娠12週になると流産の可能性が低くなるとされていて、「妊娠12週の壁」や「安定期に入る」などと言い表されます。

センシティブな問題なので医師側が強要できることではありませんが、僅かな危険性を排除するためにも、可能であれば妊娠が分かった段階で医師に報告することをお勧めします。

つわりなどで気分が悪いときの口腔ケア

つわりがひどいときは、歯を磨くことも辛いことがあります。

ですが、できるだけこまめな歯磨きをお勧めしています。なぜかと言うと、妊娠中は常時と比べてお口の中のトラブルが多くなる傾向にあるため。妊娠中に起きやすい口内トラブルの最たる例は、「妊娠性歯肉炎」です。

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妊娠性歯肉炎の原因
  • つわりの嘔吐による口内の汚れ
  • 食生活の変化
  • 女性ホルモンの増加による口内環境を好む細菌が増えるから
  • 唾液の分泌量が減るから

細かな対策ですが、ヘッド部分が小さい子供用歯ブラシを使うと、歯磨き時の気持ち悪さが多少軽減されます。どうしても歯磨きが難しいときは、口をゆすぐなどの対処を心がけてください。

また、デンタルリンスでの口内洗浄や、キシリトール配合のガムなどを噛んで、唾液の分泌を促すことも有効です。

辛いときは通院を休んでもいいの? 矯正装置を外すことは?

体調が思わしくないときの通院と、矯正装置の取り外しについてご紹介します。

通院について

まずは通院について。

担当医に相談することが前提となりますが、基本的にはお休みしていただいて問題ありません。当院の場合、体調が優れない場合は無理をせず、通院を控えていただくようお願いしています。

通院の頻度は矯正装置の種類によって異なります。

矯正装置通院頻度
インビザライン
(マウスピース矯正)

2~3カ月に1回
ワイヤー矯正
1カ月に1回

症状によりますが、当院で行っているインビザライン矯正の場合、2カ月~3カ月に1度の感覚で治療の進捗を確認できれば問題ありません。

矯正装置の取り外しについて

続いて、矯正装置を外してよいかどうかについて。

結論としては、「取り外してもよいが後戻りする可能性がある」ということになります。

用語解説

後戻り
矯正治療によって移動した歯が、元に位置に戻ってしまうこと。

「矯正装置を着けているのは辛いけど、歯並びが元に戻ってしまうのは嫌だ」というお声が聞こえてきそうですが、インビザラインの場合であれば「ひとつ前のアライナーを装着しておく」という手段があります。

インビザラインは、治療を開始する前に精密検査をし、「アライナー」と呼ばれる透明のマウスピース型の矯正装置を何十個も作成します。

治療開始から10日目まではAのアライナー、11日目から20日目まではBのアライナー…という具合で矯正装置を交換していきます。アライナーAよりもアライナーBの方が理想の歯並びに近い形状をしているわけです。

次々とアライナーを交換していくことにより、最終的には目指す歯並びになるというのがインビザライン矯正の基本的な考え方になります。

話を本題に戻しますが、「ひとつ前のアライナーを装着しておく」ということは「歯を移動させないアライナーを装着しておく」と同じ意味です。

マウスピースを口に入れている違和感はあるかしれませんが、歯の移動が完了したアライナーを付けていることになるので、全くと言っていいほど痛みはありません。

ですが、マウスピース自体を外したままにしてしまうと後戻りが起きてしまうので、保険的な意味合いでひとつ前のアライナーを着けておきましょう、ということになります。

一方で、ワイヤー矯正の場合は患者さまご自身での取り外しができません。

こちらもインビザラインとワイヤー矯正とでは趣が異なります。

矯正装置取り外しの方法取り外しの費用
インビザライン

患者さまご自身で取り外し無料
ワイヤー矯正

歯科医院を受診して医師が取り外し一般的には有料(1本3,000円程度)
矯正装置取り外しの方法取り外しの費用
インビザライン
(マウスピース矯正)
患者さまご自身で取り外し無料
ワイヤー矯正
歯科医院を受診して医師が取り外し一般的には有料(1本3,000円程度)

歯科医院で取り外す場合はひと手間かかりますし、多くの場合は取り外しのために数千円~数万円の費用が発生します。

せっかく始めた歯科矯正なので、できる限り続けることをお勧めしますが、体調不良などにより継続が難しい場合は、後戻りの可能性を頭に入れつつ、医師に相談してみるとよいでしょう。

妊娠中に歯の矯正をする場合は安定期に入ってからが望ましい

インビザラインDr.
柏先生

妊娠中に歯科矯正を始める場合は、初期の1~3カ月目は避け、安定期である4~8カ月目からにしましょう。

妊娠中に歯科矯正を開始することはあまりお勧めしませんが、絶対にNGという訳ではありません。

妊娠中に歯の矯正を希望される方は、体調が安定しない妊娠初期の1~3カ月目は避けるようにして、安定期である4~8カ月目を目安に開始することをお勧めします。

前述した通り、歯科矯正を始める際はレントゲンを撮ったりアンカースクリューを打ち込むために局所麻酔を使ったりしますので、医師とよく相談するようにしてください。

出産前後の矯正治療との向き合い方

仮に妊娠5カ月目から歯の矯正を始めた場合、出産される時は高確率で矯正治療の真っ最中です。

あくまでも当院がご提案しているインビザラインでの方法になりますが、ご出産前後の流れとしては、以下のようなお話をすることがあります。

出産後の矯正治療の流れ(当院の場合)
  1. 出産予定日の1~2カ月間は、経過観測のためのご来院を控えていただいて問題無い
  2. ご出産の約2週間前から新しいマウスピースへの交換はせず、依然と同じものを装着して歯が動かないようにする
  3. ご出産後、歯科矯正を再開できる体調になったら医師に連絡を入れ、今後の流れを相談する

患者さまのご状況に応じてご提案内容も変化しますが、最も大切なのは医師とのコミュニケーションを取ることです。積極的に地震の要望を伝えるようにしましょう。

分娩室で矯正装置はどうしたらいい?

基本的には事前に医師と相談し、指示に従うようにしてください。

当院で扱っているインビザラインは一時的に取り外しが可能な装置です。分娩時の噛み締めで破損する可能性があるため、非装着の状態でご出産に臨まれることをお勧めしています。

ワイヤー矯正は装着したまま分娩室に入ると、お口の中をケガするリスクがあります。これを加味した上で「着けたまま出産に臨む」と「事前に取り外す」の2パターンが考えられます。

事前に外すかどうかは担当医とご相談の上で決めていただいて良いかと思います。

この記事のまとめ

柏 英希
インビザラインDr.
柏 英希
  • 歯科矯正自体が母体や赤ちゃんに悪い影響を与えることは無い
  • 妊娠中に歯科矯正を始めることは、平時よりもリスクがあるのでお勧めしない
  • 主なリスクは「妊娠性歯肉炎」、「レントゲン」、「麻酔」、「痛み止め」、「継続の難易度が高い」
  • 歯科矯正中に妊娠が分かったら、医師に報告することが大切
  • 体調がよくないときは、来院を控えても問題無い
  • インビザライン矯正の場合、一時的に取り外したり、ひとつ前のマウスピースに戻したりと、汎用的な矯正治療の継続が可能
  • 分娩室ではインビザライン矯正装置は外した方がいい

妊娠期間中・出産時・産後について、歯科矯正との向き合い方をまとめました。

妊娠中の歯科矯正は、平常時よりも継続の難易度が高くなります。無理をせず、ご自身とお腹の中のお子さんの安全を第一に考えることをお勧めいたします。

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